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2001年 1月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

音楽とともに人々に時代を伝える写真の数々
ゴットリーブとレオナード、2人の巨匠の写真展と対談

 ビバップ誕生の黎明期から、現在までの60年弱の間、NYのジャズ・シーンも、音楽のスタイルだけでなく、中心となるクラブ群や、ミュージシャンのファッション、観客層などが様々な変遷を経てきた。今回は、40、50年代のジャズ・シーンの模様を現在に伝える貴重なドキュメンタリーを撮影した、写真家のウィリアム・ゴットリーブと、ハーマン・レオナードの対談と写真展を、リポートしたい。
 
 壁いっぱいにかけられた、モノクロ・イメージは、チャーリー・パーカー(as)、ディジィー・ガレスピー(tp)、セロニアス・モンク(p)、マイルス・デイヴィス(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、ビリー・ホリディ(vo)、エラ・フィッツジェラルド(vo)ら、ジャズ・ジャイアンツ達の、創作意欲に燃えた青春時代の群像である。リンカーン・センター内の、ウォルター・ルード・シアターのロビーは、まるで、ビバップ・サウンドであふれているようだ。今回のこの写真展と対談は、精力的に、魅力的なライヴ・パフォーマンスを提供している、ジャズ・アット・リンカーン・センター(Jazz@Lincoln Center)の特別企画で、実現した。筆者も、ジャズ・ミュージシャンの撮影に携わるものとして、そのパイオニアといえる、ゴットリーブと、レオナードには、是非一度会ってみたいと思っていたが、長年の願いはこの日、実現した。
 ウィリアム・P・ゴットリーブは、1939年から、ジャズ・ミュージシャンのポートレイト撮影を、始めた。ワシントン・ポスト紙に毎週掲載されるゴットリーブ自身が執筆するジャズ・コラムのための撮影であるが、これは、アメリカのメジャー新聞が、定期的にジャズ・ミュージックを取りあげた最初の企画である。途中、兵役をへて、ダウン・ビート誌の編集者としても、ジャズ・シーンと関わり続けたゴットリーブだが、48年に、この業界から引退し、子供の本や教育フィルムの制作の世界へと転身した。1979年の写真界からの引退を期に出版された、彼のジャズ・ミュージックへのオマージュといえる写真集、"The Golden Age of Jazz"は現在まで12版を重ね、ベスト・セラーとなっている。ジャズに興味を持つ人ならば、チャーリー・パーカーと、マイルス・デイヴィスが並んで演奏している、レコーディング・スタジオでのショットなどを、必ず目にしているはずだ。この日は、自己の代表作を次々とスライドで投影しながら、そのときのエピソードを紹介した。驚かされたのは、ゴットリーブは、当時はまだ35mmカメラの性能が、十分でなかったために、スピード・グラフィックスという、4インチ X 5インチのネガ・サイズのプレス用カメラと、一回ずつ電球を交換する、バルブ・フラッシュを使い、一晩に2、3カットしか撮影していなかったというエピソードだ。暗く、ピント合わせが困難なクラブや、レコーディング・スタジオでの撮影で、大判カメラに、少ない撮影枚数で、このクオリティを保っていたことは、驚異に値する。
 ハーマン・レオナードは、ゴットリーブがジャズ・シーンから姿を消す頃に、入れ替わるように登場する。52丁目や、ハーレムに有名クラブが建ち並んでいた40年代後半に、撮影を始めた。 カメラは、レオナードにとってクラブに入るフリー・パスであり、パーカー、ガレスピー、モンクらのビバップのクリエイター達との友情を深めながら、50年代の貴重なドキュメンタリーを記録していった。プレイ・ボーイ誌等の撮影をも手がけていたレオナードは、50年代後半にファッション・フォトグラファーとしてパリへ居を移し、ジャズ・シーンの第一線から引く。80年代の後半から、またジャズ・ミュージシャンの撮影を再開したレオナードは、死の1ヶ月前のモントルーでのマイルス・デイヴィスなど、貴重な写真を撮影し、現在も精力的な撮影活動を続けている。ジャズ・ミュージシャンの撮影に携わるフォトグラファーとしては、空白の期間もあるが、50年以上のもっとも長い期間ジャズ・シーンの変遷に、立ち会っているといえよう。
 ハーマンもレオナードも、ともにミュージシャンとの友情の記録としても、自己の作品を捉えている。麻薬禍からの、数度の服役生活から復帰しカーネギー・ホールのステージに立った、ビリー・ホリディ(vo)と、彼女のお気に入りの白いドレスのエピソードや、セロニアス・モンクのフォト・セッションにおける奇行など、近い時代を、共に過ごしたもの同士の共通の話題で、盛り上がっている対談では、写真のミュージシャン達が等身大に、みえてきた。
 写真の重要な要素に、事実を記録するという役割がある限り、2人の写真も、また音楽とともに人々に、その時代を伝えていくであろう。


〔10/31/00 於スタンリー・H・カプラン・ペントハウス)

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