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2003年 4月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

穐吉敏子、マリア・シュナイダー  ふたつの
ジャズ・オーケストラが見せたビッグバンドの未来

 13人のホーン奏者の迫力、ビッグバンドは最高に贅沢なサウンドだ。NYのビッグバンド・シーンで、コンスタントに活動しているクリエイティヴなグループといえば、穐吉敏子ジャズ・オーケストラと、マリア・シュナイダー・オーケストラだ。Jazz @ Lincoln Centerの企画で、この2つのビッグバンドが、新作をひっさげてアリス・タリー・ホールで競演した。白熱の対決を、お伝えしよう。
 
 総勢17人以上のビッグバンドの運営は、アメリカでも困難がつきまとう。多くの名門ビッグバンドは、新リーダーによって存続はしているが、コンスタントに新作を発表しているという状況にはない。その中で、穐吉敏子ジャズ・オーケストラは、今年結成30年、NYに移転して20年を迎え、また90年以降に登場し、高い評価を受けているマリア・シュナイダー・オーケストラは、結成10年を迎えた。アルバムを発表し、演奏活動も活発なビッグバンドのリーダーが、2人とも女性というのも、時代の流れを感じる。
 マリア・シュナイダーは、ボブ・ブルックマイヤー(tb)に編曲を学び修士号を得て、NYに進出。メル・ルイス・オーケストラのアシスタント・アレンジャーを務め、ギル・エヴァンス・オーケストラに移籍、最後の弟子となった。サド・メル、ギル・オケとモダン・ビッグバンドの、フルーティな部分を吸収し自らのビッグバンドを結成、ファースト・アルバムの「エヴァンセンス」はグラミーにノミネートされ、新世代のアレンジャーとして頭角をあらわした。その後、2枚のリーダー作を、エンヤからリリース。2000年のJVCジャズ・フェスティヴァルでは、マイルス・デイヴィス(tp)&ギル・エヴァンスの「スケッチ・オブ・スペイン」を再現するトリビュート・コンサートで総指揮を執り、ギル・エヴァンスの後継者としての確固たる地位を築いた。
 この日のコンサートは、ファースト・アルバムの一曲目「ウィグレイ」から始まった。続いては、書き下ろしの新作「スリー・ロマンス」。ブラジルのショーロを題材とした「ショーロ・ダンカド」、イングリット・ジェンセン(tp)とチャールス・ピロウ(ss)が、サウンドのダンスを聴かせてくれた「パ・ドゥ・ドゥ」、アップ・テンポのブラジリアン・チューン「ダンカ・イルソリア」から構成される三部作だ。マリア・シュナイダーの音楽は、いつも映像イメージを喚起させるが、新曲もサウンド・トラックのような緻密な構成である。子供の頃に見た、モダン・バレエの見事な音楽とダンスのシンクロが、作曲へのモチベーションとなったと、語っている。近年、フラメンコに傾倒している彼女は、今回のワールド・プレミア曲に、「ブレリアス・ソレイアス・イ・ルンバス」を提供した。トム・ホーナー(ds)とジェフ・バラード(per)が、フラメンコ・パーカッションのカホーンで、タンゴ・グルーヴを生み出す。フリューゲル・ホーンを含むアンサンブルが、ギル・エヴァンスのフレンチ・ホーン・アレンジを思わせるサウンドを奏でる。個々のプレイヤーの力量、楽器の特性を完璧に計算したアレンジメントだ。ギル・エヴァンス・トリビュート・プロジェクトの成果が、見事に自己の新作にフィードバックされていた。
 穐吉敏子オーケストラは、テーマ曲「ロング・イエロー・ロード」で幕開け、ルー・タバキンのフルートが圧巻の「デザート・レディ・ファンタジー」、プレミア作品の「ドラム・コンファレンス」へと続いた。すべての国、文化は、固有のドラムをもっているというテーマで、作曲されたこの曲は、三部構成で、ジョセフ・ゴンザレス(Conga)、ヴァルティーニョ(per)、というカリブとブラジルからのプレイヤーと、日本から和太鼓の林英哲が参加した大作だ。ラテン・パーカッション陣は、ビッグバンド・サウンドに溶け込んでいた。大太鼓と、ホーン・アンサンブルのシンクロを期待したのだが、ルー・タバキンのテナーとの壮絶なデュオ・バトル、ソロ・パートでのフィーチャー以外では、ワン・コーラスの参加だった。エンディングは、最新アルバム「ヒロシマ・ライジング・フロム・ジ・エイビス」の中から「エピローグ」で締めくくられる。
 以前、穐吉の旧作、新作を演奏する回顧展コンサートを聴いて、エリントン・オーケストラの、アヴァンギャルドな側面は、ギル・エヴァンス・オーケストラに受け継がれ、穐吉はコンセプチュアルな作曲や、和楽器の導入が注目されるが、実は、エリントンのストレートアヘッドな部分を継承している印象を受けた。この夜の2つのビッグバンドの演奏を聴くと、録音でうかがい知る全盛時のエリントン・オーケストラのサウンドが、浮かび上がってきた。21世紀のビッグバンドへ、エリントン・サウンドの大いなる発展を期待したい。(2/1/2003 於Alice Tully Hall)

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