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2001年 5月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

不世出の天才マイルス・デイヴィスの偉大さを再認識
シンフォニー・スペースでのミュージック・マラソン・コンサート

 

 NYには、文化振興、普及を目的とする非営利団体が多くあるが、シンフォニー・スペースも、多目的スペースを活用した、音楽、映画、パフォーミング・アートを、紹介する組織だ。毎年3月の恒例イベント、12時間に及ぶミュージック・マラソン・コンサートの今年のテーマは、マイルス・デイヴィス(tp)であった。30グループ、155人のミュージシャンが参加し、オマージュを捧げた空前のイベントを、リポートしたい。
 
 今年は、マイルス・ディヴィスの没後10周年にあたる。またマイルスは、長い間マンハッタンのアッパー・ウェストサイドに住んでおり、同じエリアにあるシンフォニー・スペースは、クラッシクの作曲家を特集することが多かった恒例のミュージック・マラソンに、マイルスを取りあげ敬意を表した。無料コンサートのため、正午の開始から会場は満員で、午後からは入れ替えを待つ人々の長蛇の列が延びる盛況であった。 参加した30グループは、チャーリー・パーカー(as)との共演時代の"ドナ・リー"を演奏したジョン・ファディス(tp)から、最後の作品"ドゥー・バップ"を取りあげたオル・ダラ(tp)まで、各時代ごとのマイルス・ミュージックの代表曲を題材にし、スタイル、世代を越えてそれぞれの思いを演奏で雄弁に語った。

  オープニング・を、"ビッチェズ・ブリュー"で飾ったのは、ボビー・プリヴァイト(ds)のヴゥー・ドゥー・ダウン・オーケストラだ。混沌としたサウンドが、波乱に満ちた長い一日を予感させる。特筆すべきは9つのグループが、60年代後期から70年半ばのエレクトリック・マイルス時代を取りあげたことだ。ビル・フリゼル(g)と、DJロジック(turntable)をゲストに、"ライヴ・イーヴィル"を演奏した、スティーヴン・バーンスタイン(tp)率いるセックス・モブ、"ゲット・アップ・ウィズ・イット"をカバーした、フランク・ロンドン(tp)・グループ、メルヴィン・ギブス(el-b)・グループ、"ジャック・ジョンソン"を、ヴァーノン・リード(g)・グループと、マイルス・ミュージックの進化の過程を聴かせてくれた。未だ評価が定まっていないとも言える、サウンド・カオスに満ちた70年代マイルスが、30年の時を経てプレイヤーの中では、消化されてきたのであろう。
 この日のハイライトは、大編成のオーケストラで、"スケッチ・オブ・スペイン"を指揮したマリア・シュナイダーである。メイン・ソリストにウォレス・ルーニー(tp)と、オリジナルの編曲者、ギル・エヴァンスの遺児であるマイルス・エヴァンス(tp)を起用し、マイルス&ギルの様式美を聴かせてくれた。 シュナイダーは、マイルスの長いキャリアの最後を飾った、91年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルの、クインシー・ジョーンズ(arr)指揮による、ギル・エヴァンス・オーケストラ再現コンサートでも、アレンジを提供している。ベテラン・トランペッターの、エディ・ヘンダーソンは、マイルス・グループのオリジナル・メンバーのジミー・コブ(ds)と、50年代後期と60年代中期の作品を演奏して対比はかり、若手のテレル・スタッフォード(tp)は、ハード・バップ時代に取り組んだ。デイヴ・ダグラス(tp)は、40年代、60年代後期、80年代と3つの時代を総括した。 
 このイベントに参加したミュージシャン達の、精力的な活動から、10年前マイルス・ディヴィスが残していった宿題の終了が、やっと近づいたことがわかり、改めてこのジャズそのものといえる不世出の天才の偉大さが、認識される。
 (3/24 於 シンフォニー・スペース)

 
 Symphony Space
 2537 Broadway(95th St.)
 New York, NY 10025
 tel. (212)864-1414
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