Make your own free website on Tripod.com

2000年  6月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

40年以上の時を経て明らかになった
ヴォーカルをメインとした、エリントン音楽の知らせざる一面

 1999年は、デューク・エリントン生誕100年を記念して、ウィントン・マーサリス(tp)率いるリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラや、多くのグループが企画コンサートを行った。その余熱がまださめない今年、エリントンの生前には、ついに上演されることがなかった幻のミュージカル作品 "Saturday Laughter"が、リメイクされ"ルネッサンス・マン"として、日の目を見ることとなった。セント・ピータース教会でのコンサートの模様を、リポートしたい。
 "シークレット・エリントン"とも言うべき、この19曲からなるミュージカルは、1958年に作曲された。エリントンは、ブロードウェイ・ミュージカルでは、"Beggar's Holiday(1946)"と、"Pousse-Cafe(1966)"を残しているが、いずれも大きな成功は収められなかった。舞台音楽作品では、1941年の風刺的なレヴュー"Jamp for Joy"がロサンジェルスで、11週間連続興業の成功を収め、エリントンの代表作とされている。エリントン自身は、ビック・バンドの演奏活動を中心に考えており、舞台音楽製作には関心が薄かったと言われている。
 "ルネッサンス・マン"のオリジナル・ストーリーである"Saturday Laughter"は、作者のハーバート・マーティンによると、1950年代の南アフリカを舞台として、恋の三角関係を描いたラヴ・ストーリーで、若き日のマーティンは、このストーリーにエリントンが音楽を書き下ろしてくれて、絶対に興業が可能になると、思っていた。しかしオール・アフロ・アメリカン・キャストのミュージカルを受け入れるほど、公民権運動前夜のブロードウェイ・ショウ・ビジネスは成熟しておらず、この作品は封印されたのであった。その後1974年のエリントンの葬儀の際に、楽曲の一部が演奏され、また1977年に、アトランタの非営利劇場で、実験的に上演されたことがある。
 およそ10年前に、このミュージカルの復刻を思い立ったマーティンは、自らの版権が無効になっていることに気がつく。彼は、舞台を1920年代のハーレム・ルネッサンス時代に置き換え、新たにエリントンの曲に作詞をし、"ルネッサンス・マン"として、この幻の楽曲の封印を解いたのだ。
 プロデューサーのトッド・バルカンは、1年ほど前から、"ルネッサンス・マン"のアルバム化を企画しており、その一環とデューク・エリントン・ソサエティ・オブ・ニューヨークの主催により、この日のコンサートは実現した。
 
 アルツーロ・オファリル(p)が、ミュージカル・ディレクターを務めた。楽譜は、ラフなメロディ譜しか現存していない。エリントンは、自らのビック・バンドでは、この作品を取りあげなかったため、オーケストレイションが、なされていないのだ。オファリルは、エリントンのエッセンスをキープしつつ、よりコンテンポラリーなアレンジを施した。ジェフリー・スミス、イアン・ショウ、ローズ・フィリップ、カレン・オバーリン、ジュディ・シルヴァノら男性2人、女性3人のヴォーカル陣が、メイン・リフを、アンサンブルと、ソロで歌い、それぞれの曲でフィーチャーされる。ジョー・ロバーノ(ts)が、絶妙のオブリガートで、シンガー達をひきたて、メロディアスなソロをとった。ジョー・ベック(g)は、軽快にスウィングするバッキングで、グループにダイナミックスを与える。オファリル(p)は、アンサンブル全体に、気を配りながら、ラテン・スピリットあふれるリズミックなソロを聴かせ、ブライアン・トルフ(b)とビクター・ジョーンズ(ds)が、どっしりとボトムを支えた。
 5人のシンガー達は、それぞれ異なったキャラクターを持っている。アフロ・アメリカンで、ブルース、ジャズのバックグランドを持つスミスの、スロー・バラードでの大きくうねるような間の取り方は、楽曲によりいっそうの深みを与える。ロバーノのサックス・ソロにも、そのグルーヴが引き継がれ、独特のダーク・トーンと重なり、エリントン・サウンドが再現される。
 同じく、ジャズ&ブルースをバックグランドを持ったフィリップと、ジャズだけでなくクラッシック・オペラをもルーツにもつシルヴァノの共演曲"The Man"では、両者の見事なコントラストを聴かせた。オファリルは、この曲にボサノヴァ・アレンジで、エリントン・ミュージックに、新しい解釈を加えた。
 イギリスから、このコンサートに参加したショウは、ヨーロッパで高い評価を得ているシンガーであり、レギュラーの伴奏者であるジェイムス・ピアソン(p)をバックに圧倒的な、スキャットを披露した。
 ヴォーカルをメインにした、エリントンの知られざる一面が、40年以上の時をへて、この夜、明らかになった。ウィントン・マーサリス(tp)らの参加も予定されているアルバム"ルネッサンス・マン"のリリースも、期待される。
(4/15/00 於セント・ピータース教会)

インフォメーション