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2000年  7月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

ニューヨーク・ジャム・バンド・シーンの注目株
Soulive(ソウライヴ)の衝撃的クラブ・ギグ

 ジョン・スコフィールド(g)の新作「ヴァンプ」(ヴァーヴ)によって、日本のリスナーに、その概容が、おぼろげながらに明らかになったジャム・バンド・シーンだが、NYでは、ニッティング・ファクトリー、トニック、ウエットランズ・プリザーヴ、バワリー・ボールルームなどのクラブを拠点として、様々なグループが活動している。その中でもNYのヒップなリスナーに高い支持を得ているバンド、ソウライヴのギグをリポートしよう。

 アラン・エヴァンス(ds)、ニール・エヴァンス (org)、エリック・クラスノー(g)からなるオルガン・トリオSoulive(ソウライヴ)は、その名の通りソウルフルで熱いライヴが売り物のグループだ。筆者は、3月のアーヴィング・プラザにおける、ジョン・スコフィールドの新作発表ライヴで、オープニング・アクトをつとめた彼らの演奏を初めて聴き、衝撃を受けた。スタジオ録音とライヴ・トラックを含むファースト・アルバム"Turn it out"(Velour Recordings)は愛聴盤となり、ロードからNYに戻って、フランチャイズ・クラブのウエットランズ・プリザーヴでのこの日のギグは、期待が高まった。ファースト・アルバムの一曲目と同じ"ステッピン"から、パフォーマンスは、始まった。アラン・エヴァンス(ds)のタイトなファンク・ビートの上で、ニール・エヴァンス(org)の分厚いコード・ワークと左手の重いベース・ラインがサウンドの核を創り、エリック・クラスノー(g)が端正なギター・ワークでシンプルなリフを反復し、スタンディング・ホールに満員の観客のボルテージを一気にトップ・ギアにシフトした。ダンサブルなビートと、本格的なインプロヴィゼーションという、ジャム・バンドと総称される一群のクループの特徴を、反映した演奏だ。ジャム・バンドとは、ジャズ・ヒストリーの中で言われる、ビ・バップ、モード、フュージョンといった演奏スタイルをさす言葉ではなく、ロック、ファンク、フォーク、ジャズ、ヒップ・ホップの要素を、文字通りジャムして併せ持ったグループと、そのムーヴメントを意味する言葉である。M,M&W(メデスキー、マーチン&ウッド)や、ラウンジ・リザースあたりをルーツとし、それぞれのバンドが独自の音楽スタイルとバックグランドをもち、ほとんどがメジャー契約を持たず、地元のクラブ・ギグを中心としながら、全米各地のアンダーグランド系のクラブ・サーキットを周り、そのダンサブルなビートが、ジャズとは離れたところにいた若い大学生などのクラブ・キッズの支持を得た。この新しいリスナー層の口コミや、ライヴ・テープの交換、インターネットを通じて、この2年ほどの間に、アメリカの音楽誌でも特集が組まれるようなムーヴメントとして認知され始めるようになったのだ。インターネットの発達が、このムーヴメントに与えた影響は大きく、ソウライヴは、mp3.comから1日に1万5000件も、ダウンロードされている。ヴェロア・レコーディングスのサイトには、ソウライヴと、ジョン・スコフィールド(g)の競演ライヴの音源も、聴くことが出来る。
 結成してから1年足らずのソウライヴは、全員が25歳以下という若いバンドだが、地元NYのヴィレッジのタワー・レコードのジャズ・チャートでは、メジャー・レーベル契約アーティストを押さえ堂々の3位にランクインし、若いヒップなリスナー層の支持を得ている。ジミー・スミス(org)、ラリー・ヤング(org)といったトラディショナルなオルガン・トリオをモチーフとしながら、ファンク、ヒップ・ホップの要素をも、盛り込んでいる。アラン・エヴァンス(ds)のドラミングは、ジェイムス・ブラウン(vo)グループの、ジョン"ジャボ"スターク(ds)とクライド・スタブルフィールド(ds)が確立したファンク・ドラムのスタイルに、ヒップ・ホップの影響を受けたシャープなドラミングを、兼ね備えている。ニール・エヴァンス(org)が左手で創り出すベースは、ファンクのみならず、モータウンなどのベース・ラインの痕跡がみられる。エリック・クラスノー(g)のギター・ワークは、グラント・グリーン(g)、ブルー・ノート時代のジョージ・ベンソンを基本としながら、盛り上がってくるとジミ・ヘンドリックス(g)の技や、ナイル・ロジャース(g)ばりのカッティング、ワウワウ・ワトソン(g)のワウ・ペダル・ワークなどが繰り出される。若い世代のミュージシャンの中では、異質と思われるこれらの要素が、"クール"というキー・ワードによって、同等のものとして存在していると思われる。
 ファンキーなオリジナル・チューンの、セット・メニューは佳境に入った。オルガンをオフにした、激しいギターとドラムのデュオ・バトルや、ベース・ラインをオフにしたオルガンと、ギターのコール・アンド・レスポンスなどが、今までインプロヴィゼーション・ミュージックに触れる機会が少なかったキッズ達にも違和感なく受け入れられ、盛り上がっている。この日のライヴの模様は、日本でもスカイパーフェクTVのCh.734 MusicLinkのGloval Boxという番組枠中で、New York Music Tribeとして、6月後半から放送される。ヴァーヴ、ブルー・ノートらメジャー各社のA&Rマンたちも、聴きに来ていた。日本でも、ソウライヴの熱いライヴを体感できる日が近いだろう。(5/13/00 於ウエットランズ・プリザーヴ)

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