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2004年 08月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

50周年記念のJVCジャズ・フェスティヴァルで
異彩を放つ老舗ヴァンガードのユリ・ケイン・ウィーク

 今年も、JVCジャズ・フェスティヴァルのシーズンが巡ってきた。大ホール、カレッジ、野外ステージ、ジャズ・クラブで、様々なコンサートが同時進行し、NYジャズ・シーンの一年のハイライトを迎える。ヴィレッジ・ヴァンガードには、"A Man of Ideas"と銘打って、ストレート・アヘッド・ジャズからクラッシック、クラブ・ミュージックまで、幅広いフィールドで活躍をするユリ・ケイン(p,kb)が、毎晩ちがう編成のグループとコンセプトで出演した。
 
 ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル時代から、ジョージ・ウェインのプロデュースで今年50周年を迎えたJVCジャズ・フェスティヴァルは、西海岸のモントレー・ジャズ・フェスティヴァルと並んで、アメリカでもっとも長い伝統を誇る。今年は、カーネギー・ホールには、オーネット・コールマン(as,tp.vln)や、ハンコック(p)、ショーター(ts,ss)、ホランド(b)、ブレイド(ds)・グループ、ジョアン・ジルベルト(vo,g)などが出演し、ハンター・カレッジでは、7月にインターネット販売のみの完全自主制作アルバムを発表し絶好調のマリア・シュナイダー・オーケストラなどが聴けた。ジャズ・クラブも含めると12カ所の会場で、12日間で、52本のライヴが催かれる。50年前から常に最先端のジャズを発信していた老舗中の老舗ヴィレッジ・ヴァンガードは、ジャンルを超えた活動で注目の鬼才ユリ・ケイン(p,kb)が、クラッシックのマーラーや、バッハのゴールドベルグ変奏曲の新解釈を独自のアレンジで表現するユニット、バッハからブギー・ウギーまでを縦横無尽に弾き倒すトリオ、グレッグ・オズビー(as)をフィーチャーした、80年代末のNYシーンを思わせるクァルテット、最新のクラブ・ミュージックを導入したバンドで登場する。まさに音楽的アイディアが泉のごとく湧き上がる一週間となった。
 
 ユリ・ケインは、1956年フィラデルフィア出身。クラシック・ミュージックの背景をも持ち、81年頃に地元でキャリアをスタート、85年からNYシーンに登場する。ベテラン・アーティストとの共演や、当時のニッティング・ファクトリーを拠点とした、先鋭的若手アーティストの中で頭角をあらわし、90年代半ばからはドイツのレーベル、ウィンター&ウィンターを拠点に多くのリーダー作をリリースしている。3日目の出演グループは、2001年にアルバムをリリースしたクラブ・ミュージック・ユニット、ベッド・ロックである。オーガニック・グルーヴで叩き出すダンス・ビートが鮮烈な、ザック・ダンジガー(ds)&ティム・レフェーブル(el-b)のコンビは、ウェイン・ショーター(ts,ss)、デヴィッド・フュージンスキ(g)、ウェイン・クランツ(p)や、ヨーロッパでのティル・ブレナー(tp,vo)らとのコラボレーションで評価が高い。的確にアンサンブルのツボを突くDJ オリーヴは、90年代に勃興したブルックリンのウィリアムスバーグ・アート・シーンを支える重要人物であり、メデスキ、マーティン&ウッドとの共演でも知られる。
 フェンダー・ローズのメロディアスなイントロが、タイトなベース・ラインと、リズミックなドラムの呼び水となる。オーガニック・グルーヴのドラムン・ベースの大きなうねりに、DJオリーヴが、ターンテーブルとラップトップのパソコンから、アーティフィシャル・グルーヴと、サウンド・セグメンツをブレンドする。ケイン、ダンジガーも、演奏しながらMacを操作し、レフェーブルはiPodから曲の断片をひろう。4人が同時にサウンドのコラージュを創造し、メドレーのごとく曲が展開した。ケインのローズ・サウンドは、ハービー・ハンコック(p.kb)、チック・コリア(p.kb)、ジョー・ザビヌル(p.kb)、キース・ジャレット(p.kb)が去来した70年代初期のマイルス・グループと、その影響下に発展したフュージョンへのノスタルジーを感じさせる。
 シンガーがステージに登場する。バーバラ・ウォーカーは、グローヴァー・ワシントン・ジュニア(ts,ss)らと共演した、ソウル/ジャズ・シンガーだ。彼女の熱唱で、バンドのファンキー度数は急上昇し、トラディショナルなジャズ・クラブだったヴァンガードは、トランス・クラブから、今度はソウル・バーへと、塗り替えられてしまった。2曲のボーカル・チューンで、ウォーカーはステージを去り、ケインはピアノに向かう。あえてスカスカのボサ・リズムの"It might as well be spring."、スウィングでベイシー・オケの十八番「キュート」をミックスし、ノイズを混ぜながらラウンジ・ミュージック系のノリで軽く料理し、ジャズ・クラブの雰囲気を取り戻した。70年代的ファクターに、ヒップホップ、テクノの洗礼を受けたシャープなリズムと、デジタル・テクノロジーが融合して、21世紀型のボーダーレス・ミュージックを創ったユリ・ケインの音楽は、まだまだ拡散していく。(6/24/2004 於Village Vanguard, NYC)
 
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