2001年9月号 Jazz Life誌(未発行) New York Report

Big Apple Jazz Witness

サザン・ミュージックの、ジャム・ブレンド
ジョン・メデスキの、ニュー・プロジェクト"The Word"

MM&Wは、現在のNYオルタネイティヴ・ミュージック・シーンを象徴するバンドであり、絶大な人気を誇っている。その中心メンバーのジョン・メデスキ(org、Kb)が、サザン・オルタネイティヴ・ロックの雄、ノース・ミシシッピ・オールスターズ、スティール・ペダル・ギターの新鋭、ロバート・ランドルフと、組んだニュー・プロジェクトが、"The Word"である。どのようなサウンドが創られるのか、期待は高まったが、そのベールがついに解き放たれたバワリー・ボールルームでの、デビュー・ギグをリポートしよう。  

 インストルメンタル・ゴスペル・アルバムを創る。このアイデアは、2年前に、ジョン・メデスキと、南部のブルースや、ロカビリーのフレイヴァーを持つオルタネイティヴ・ロック・バンド、ノース・ミシシッピ・オールスターズ(NMA)のギタリスト、ルーサー・ディッキンソンの二人の間で閃いた。このアイデアは、オルガンのかわりに、スティール・ペダル・ギターをフィチャーした、教会音楽のドキュメンタリー・アルバム"Sacred Steel"(Arhoolie Label)を発見したことから刺激を受け、実現へと近づく。このプロジェクトの2作目である"Sacred Steel Live"に、ディッキンソンが、NMAのベーシストで教会音楽出身のクリス・チュウに誘われて参加し、そこでスティール・ペダル・ギターの天才、ロバート・ランドルフと出会い、インストルメンタル・ゴスペル・アルバム・プロジェクトは、現実となった。
 メンバーの中核は、ルーサー・ディッキンソン(g)の兄弟、コディ・ディッキンソン(ds)、クリス・チュウ(b)ら、ノース・ミシシッピ・オールスターズが担い、フィーチャリング・ソリストとして、ジョン・メデスキ(org.kb)と、ロバート・ランドルフが、フロントを支えている。昨秋から、このメデスキのニュー・プロジェクトは、NYのオルタネイティヴ・シーンで噂が囁かれており、今年に入りMM&Wと、NMAの活動が一段落したころに、ブルックリンのシャックリン・スタジオで、1週間をかけてレコーディング。そして、この日JVCジャズ・フェスティヴァルの中の、オルタネイティヴ・ミュージックのプログラムとして、その全貌をあらわした。
 

 ロバート・ランドルフはスティール・ペダル・ギターは、ジミ・ヘンドリックス(g,vo)のように、ファンキーに咆吼する。筆者は、昨秋からウェット・ランズのセッションや、そのファミリー・バンドで、何度か耳にし注目していたが、この日は強力な競演者をえて、さらにパワーアップしたように思える。ルーサー・ディッキンソンとの激しいギター・バトルや、カッティングの応酬、ボトルネックのバッキングもステージをヒート・アップさせる。クリス・チュウと、コディ・ディッキンソンのどっしりと重くタイトなリズムの上で、どのような音楽でも対応可能な懐の深さを持つメデスキのバッキングが、全体を包み込み、またフロントの二人のギターに果敢に切り込んでった。
 The Wordの創造する音楽は、ブルース、ゴスペル、ロック、ジャズ、ブルーグラス、カントリー、ブギーといったアメリカ南部にルーツを持つ要素が、ジャムとなってブレンドされている。セットの終わりで、ジミ・ヘンドリックスの"Third Stone from the Sun"が高らかに演奏された。ヘンドリックスのルーツをも、思わされる演奏であり、すべてのルーツをたどると、そこに新しいものがひそんでいる可能性を感じさせてくれた。このライヴの直後に発売された、ファースト・アルバムは、全米ブルース・アルバム・チャートで、エリック・クラプトンらと並んで上位を占めている。この夏は、バークフェスト・ミュージック・フェスティヴァルを始めとして、各地のツアー・サーキットをまわり、9月にNYに帰ってくる。そのサウンドの発展が楽しみである。(6/27/01 於バワリー・ボールルーム)

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