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2003年 9月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

変幻自在の異空間を演出する
8弦ギターの魔術師チャーリー・ハンター

チャーリー・ハンターが、今年も好調だ。3月には、移籍第一作「ライト・ナウ・ムーヴ」、 ファンク・ユニット、ガラージ・ア・トロアの新作「エンファサイザー」も4月にリリースされ、それぞれのユニットでのツアー、Jazz Time誌では、カバー・ストーリーで最近の活躍がフィーチャーされた。NYに戻ったハンターは、ニッティング・ファクトリーに出演。日替わりゲストを迎える、スペシャル・ギグをもった。
 
 3本のベース弦と5本のギター弦の、8ストリングス・ギターを駆使して、独自のグルーヴ・ミュージックを追求するチャーリー・ハンターのギグには、そのファンク、ヒップ・ホップ、ジャズと多彩な音楽性と同様、若い大学生から、耳の肥えた年齢層まで、様々なオーディエンスが集まる。今回のギグは、レギュラー・グループではなく、1年ほど前から、セッションを繰り返している、オルタナ系ドラマー、ボビー・プレヴィットとのデュオを基本に、セックス・モブのスティーヴン・バーンスタイン(tp)、日本ではマンハッタン・ジャズ・クインテットで有名だが、ブラッド・スエット&ティアーズのメンバーでもあったルー・ソロフ(tp)、DJロジック、この日は、シアトルのグループ、クリッターズ・バギンのメンバーで、ガラージ・ア・トロアの僚友でもあるスケーリック(ts)と、4日間いろいろなゲストを迎えていた。Jazz Time誌の特集のヘッド・コピーにも、「1人の男、8本の弦、1000のグルーヴ」と謳われているが、ハンターの音楽は、グルーヴをキーとして、あらゆるタイプの音楽との共演を可能な、許容力を持っている。
 ボビー・プレヴィットとハンターは、1年ほど前にスケーリックの紹介で意気投合し、ニットなどでセッションを重ねてきた。ハンター、スケーリックに、ドラムスにスタントン・ムーアがくれば、第一期ガラージ・ア・トロア(現在はヴァイヴのマイク・デュロンが加わっている。)なのだが、プレヴィットは、ニューオリンズ・ファンク・スタイルのグルーヴィーなムーアとは、全く別タイプのドラマーである。ハンターの創る大きなうねりの中で、空間を埋めるパーカッション的なアプローチを聴かせてくれた。

 ノイジーなサウンド・カオスの中から、ベース・ラインが立ち上がる。スケーリックが、ストレートにリフをとる。スポンテニアスに、メロディーが形成され始めた。ハンターのソロに、プレヴィットがバッキングをつける。80年代のイエロー・マジック・オーケストラを思わせるような、シンセ・ドラム・サウンドは、キッチュに不思議だ。ハンターのソロでピークに達し、スケーリックにパスはまわされた。スケーリックの足回りには、ギタリスト並みのエフェクターや、ワミー・ペダル、フレイズ・サンプラーが、所狭しとセッティングされている。オフマイクでも野太く美しい音色のスケーリックだが、展開に応じて、ペダルを踏みブースターをかける。ロック・ギターのチョーキングが聴こえ、ホーンセクションが数人あらわれたようだ。現在のハンターのレギュラー・クインテット、トリオは、リズムとグルーヴ、アレンジとインプロヴィぜーションのバランスが絶妙で、トラディショナル・ジャズに近いサウンドを持つグループであり、ガラージ・ア・トロアはファンク臭の強いサウンド・カラーが特徴だが、この日のトリオは、全く異なるベクトルのテクスチャーを持っている。強いてたとえるなら、NYオルタナ系とでもいうサウンドだが、ハンターの支配するグルーヴと、スケーリックのメロディ・センスで、純度の高い音楽として成立している。音楽はノンストップで、続いている。ハンターのベースラインがラテン・リズムを刻み、コードが加わる。プレヴィットがグルーヴに厚みを加え、シンセ・ドラムでコールをかけると、スケーリックがすかさず、エフェクト・サックスでレスポンスする。それに反応したハンターが、メロディをさらに展開させ、より大きなグルーヴに発展していく。3人の相乗効果で、すべてインプロヴィぜーションのサウンドは、有機的に形を変え続け、1時間以上にわたるスリリングな漂流が終わった。
 チャーリー・ハンターと、ボビー・プレヴィットは、デュオ・アルバムのレコーディングを完了した。ハンターは、ブルー・ノート時代にも、スタイリッシュなドラマー、レオン・パーカーとデュオの快作をものしているが、ジャジーな前作とは異なった、フリーキーなサウンドと思われるニュー・アルバムは、10月にアメリカではリリースされる。チャーリー・ハンターの快進撃は、まだまだ続く。(7/21/2003 於 Knitting Factory)

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