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2003年 10月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

夏の終わりのニューヨークの喧騒を中和する
メリッサ・エリコの新時代スタンダード

 今年の夏も、セントラル・パークの野外コンサート、セレブレイト・ブルックリン・シリーズから、11回目を迎えるチャーリー・パーカー・ジャズ・フェスティヴァルなどの大規模なものから、30年近い歴史を誇るジャズ・モービル(移動バンドステージ・トラック)のように、コミュニティに密着したスタイルまで、多くのフリー・コンサートを楽しめた。毎週水曜夜のマディソン・スクエア・パークコンサート・シリーズの最終回には、メリッサ・エリコ(vo)・グループが出演した。
 
 23丁目と、マディソン・アヴェニューの起点にある。マディソン・スクエア・パーク(マディソン・スクエア・ガーデンとは別のロケーション)は、改修工事で一部が閉鎖されていたが、この夏すべてが完成し、ニューヨーカーのオアシスの一つとして、リニューアル・オープンした。コミュニティのサポートにより、今年は7/9から8/13まで6回にわたって、毎週水曜日の午後7時からコンサート・シリーズが催かれた。地元のクラブ、ジャズ・スタンダードのブッキングで、クオリティの高いアーティストが多く出演し、こぢんまりとしたステージで、都会の喧噪と、涼しい夕方の風に鳴る木々の音ともに、美しいアンサンブルを奏でた。
 
 昨年からのノラ・ジョーンズ(vo,kb)、大ブレイクの影響で、今年のジャズのメジャー各社のリリース・ラインナップは、ヴォーカル・アルバムに力が入っている。名門ヴァーヴからは、鳴り物入りでリズ・ライトがデビューし、このパーク・コンサート・シリーズでも、素晴らしいヴォイスを聴かせてくれ、また傘下レーベルのブルー・サムからは、ノラの「ドント・ノウ・ホワイ」の作曲者のジェシー・ハリスが、21世紀のジェイムス・テイラーを思わせる快作をリリースした。ブルーノートの姉妹レーベルで、スムース・ジャズ、AOR系をリリースしているマンハッタン・レコーズから、アレサ・フランクリン(vo)、ロバータ・フラッグ(vo)、チャカ・カーン(vo)を育て、ノラ・ジョーンズも手がけたアリフ・マーディンのプロデュースでデビューを飾ったのが、この日フィチャーされたメリッサ・エリコだ。
 
 2月にデビュー・アルバム「ブルー・ライク・ザット」がリリースされる前から、ブロードウェイ・ミュージカル、映画、テレビ・ドラマに出演し活躍中の、メリッサ・エリコは、NY郊外のロング・アイランド出身。幼い頃からショウ・ビジネスの世界を目指し、ダンス、演技、ヴォーカルのレッスンを受けに、マンハッタンに通う毎日だった。18歳のときに、”レ・ミゼラブル”でステージ・デビューを果たし、その美貌と歌唱力でキャリアを築いてきた。実兄で、アルバム、ライヴにも参加しているマイク・エリコ(g,vo)は、アコースティック・ギターでハーモニクスを多用したり、タッピングを駆使して弾き語りをする、オルタナ・フォークとでも言う独自のソロ・パフォーマンス・スタイルで、NYのダウンタウンで活躍するアーティストであり、メリッサに大きな影響を与えている。ファースト・アルバム「ブルー・ライク・ザット」は、この兄マイク・エリコ、R&Bを背景を持つプロデューサーのアリフ・マーディン、ピーター・アースキン(ds)や、リー・リトナー(g)との共演歴があり、ジャズにルーツを持つピアニストのアラン・パスクァとの、コラボレーションにより色彩豊かで、ゴージャスな作品となった。

 家路を急ぐ人や、ディナーへ行く人が足を止め、芝生に座り友人との会話を楽しんでいる人々の中で、コンサートは始まった。キー・パーソンのマイク・エリコと、アラン・パスクァが、両翼を固めている。ジョニ・ミッチェル(vo、g)のカバー曲「ナイト・ライド・ホーム」、アルバムの冒頭を飾っている、「アイ・スティル・ラヴ・ユー」、タイトル曲「ブルー・ライク・ザット」と続く。クリスタル・サウンドと形容できる、メリッサの透明で澄み切ったヴォイスが、街のノイズを中和していく。通常のギターのカッティングは、ソリッド、アコースティックでアイラ・シーゲルが演奏し、マイク・エリコが、効果音的なハーモニックスや、ギターのボディを叩いてパーカッションヴなアプローチを、聴かせてくれた。ライトFM局のオンエアのように、耳に心地よいサウンドだが、アラン・パスクァが、ジェリー・バーンズ(b)とジョー・マーディン(ds)とともに、複雑なパターンを容易にこなしている。ブロードウェイ・エンターテイナーでもある、メリッサのステージ・マナーは、オーディエンスを飽きさせない。曲の合間に、子供の頃のNYの思い出話でリラックスさせながら、徐々にクライマックスに導いてゆく。アンコールには、バラード「ヒー・ワズ・トゥー・グッド・トゥー・ミー」で、しっとりと余韻を残して、フェード・アウトした。リッチなミュージカル・ステージでの、メリッサ・エリコも見てみたい。(8/13/2003 於 Madison Square Park)

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