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花時間 2000年5月号より抜粋

モダンローズを生ける。絵画のように、クラシカルに。

キャロリン・ロームの世界

 お花の撮影をしていると、普通に生活していると、まずお知り合いになる機会の無いような方々と、出会うことがあります。その中でも、洗練されたフラワー・アレンジとともに、そのハイソサエティな生活に、度肝を抜かれたのは、なんといってもキャロリン・ロームさんでしょう。その高級アパートでの撮影した、フラワー・アレンジメントの紹介をしたいと思います。

 NYの真のハイソサエティが住んでいるエリアは、セントラルパーク沿いではありません。真のリッチ・ピープルは、サットン・プレイスという、クイーンズ・ボロ・ブリッジ(サイモン&ガーファンクルの明日に架ける橋はこの橋です。)のすぐ近くのイースト・リバー沿いの10ブロックほどに住んでいます。私も、この取材をするまで知らなかったのですが、外から見た目は、普通のコープだったり、タウン・ハウス(小さな一戸建て)だったりするのですが、今回初めてその中に入り、驚きました。まず、ダウンタウンだったら、ワンフロアに10世帯ぐらい入っている、ビルにだいたい、2世帯ぐらいしかはいっていません。そして、今回のキャロリン・ロームさんの家は、シックなアンティークに囲まれ、まるで映画のセットそのもの。窓からは、橋と川が見渡せ、明るい自然光が、やさしく降りそそぐ、素晴らしい部屋でした。

 キャロリン・ロームさんは、もともとはオートクチュールのファッション・デザイナーです。オスカー・デ・ラ・レンタの元で、10数年キャリアを積んだのちに独立。従来のファッションにとどまらず、フラワー・アレンジ、ガーデン、インテリア、フード、フレグナンスなどの、トータル・ライフ・スタイル・デザインを、手がけています。フラワーだけにとどまらないテーマの著作がすでに4冊あり、高い評価を得ています。

 彼女のブランドを分かりやすくいうと、大衆デパートのKマートと提携して、すっかりイメージが安くなってしまった、マーサ・スチュアートの、ハイソサエティ・ヴァージョンというところでしょうか。パリにアパルトマンをもち、NYのマンハッタンにこの超高級アパート、そして郊外のコネティカットに、バラ園もあるお屋敷をもつという彼女は、そのライフ・スタイルが、アメリカのハイソサエティの生活そのものといえるかもしれません。

 この時の取材テーマは、バラ。でも特殊なバラを使うのではなく、一般の方でも簡単に入手できるものを、使ってのアレンジですが、キャロリンさんの手にかかると、モダン・ローズも、クラシカルな雰囲気にかわります。NYのフラワー・デザイナーのトレンドは、ヨーロッパのコンサーバティヴなデザインのアンチテーゼで、ポップなデザインを基本にするマドラレークなどが代表的ですが、彼女のスタイルは、英国調を基本とした、コンサーバティヴなものに、軽くアメリカ的な遊び心がブレンドされていると言えましょう。マドラレーク同様、アンティークの花器へのこだわりは、そのアレンジメントをよりいっそう引き立てます。それは、かの北大路魯山人が、自らの料理に着せる最高の着物としての器を、自ら焼いて作ったことを思わせるこだわりで、自ら製作まではしないまでも、ヨーロッパ各地や、アメリカのオークションなどで、長い年月をかけて集めた、花器のコレクションで、美しいアレンジメントが、最高のドレスをまとって、引き立ちます。

 手際よく、8つのアレンジを作って下さった、キャロリンさんですが、途中の賄い昼食が、また絶品でした。お手伝いのスペイン人のおばさんが作ってくれた、ハーブチキンのパスタは、さすが、フードコーディネートも手がけるオフィスの賄いだけに、おいしかった。最後に残った花材で、自らのプロデュースした化粧品の瓶にマッチする、小さなブーケを作ってくれました。取材時間も、8時間近くで、そろそろ花のフレッシュさにかげりがでてくる頃に作ったこのブーケも、シンプルで、好感度が高いです。
 コネティカットのバラ園は、先日火がでてかなりのダメージを受けたと、おっしゃっていましたが、次回は、ぜひキャロリンさんプロデュースのガーデンを取材させていただきたいです。(2000年2月取材)