Brox Zoo "Congo"ゴリラな一日

 先日、花時間の取材で、ずいぶん久しぶりに、ブロンクス動物園に行って来ました。前に、ここを訪れたのは、旅行でNYに1ヶ月滞在していた87年のことですから、14年ぶりということになります。そのころのNYは、治安が今ほどは、安定していませんでした。地下鉄を乗り継いで、行ったのですが、マンハッタンを出て、地上を走る電車からみえる風景は、荒れ果てていて、降りたらまず無事にすまない感じで、ある意味、動物園内にある猛獣放し飼い地区をはしるモノレールよりも怖いものがあったのを、覚えています。

 なぜに花時間でゴリラかというと、いつも一緒に取材をしているライターのNさんご夫婦が、昨年のゴリラの森”コンゴ”開園以来、そこの大ボスのティミーくんの大ファンとなり何度も通っているということからきています。しばらく店取材ばかりをしていたし、夏の号で、アウトドア物をやろうということになり、隣のボタニカル・ガーデン(植物園)と抱き合わせで、動物園となりました。取材に向かう車の中で、原田知世を聴きながらNさんは、熱くゴリラの魅力について語ってくれましたが、今ひとつピンときませんでした。しかし、コンゴ園にはいり、熱帯雨林の道を踏み分け、オカピーなどに出会うと、いやがおうにも盛り上がってきました。ブースに入り短い解説映画を見終わると、スクリーンが開き、そこはゴリラ天国という演出も、なかなかグッときました。ここのゴリラは、抗争を起こさないようにするため、ティミーくんに仕切られ、ほかに成年の雄はいないという、大ハーレムです。ゴリラは、知能的には、猿、チンパンジー、オラウータンに劣るそうですが、その堂々とした威厳溢れる物腰は、私の友人からラッシャーと異名をとる、わが父を思い出させます。無反射ガラスに仕切られて、逆動物園状態で観察する、ゴリラの生活ぶりは、あまりのリアルさに驚かされます。子ゴリラの水を飲み遊ぶ仕草は、人間の子供とまったく同じです。この取材に行く前に、準備というわけではないのですが、ヴィデオでスタンリー・キューブリック監督の”2001年、宇宙の旅”を久々に見ました。謎の石版モノリスに触ってしまった猿の群は、骨を武器にすることを覚え、ほかの群との抗争に勝ち、人間へと進化していくという、最初のシークェンスが面白いのですが、ここのゴリラも、餌の取り合いで、木の枝を使って喧嘩をしていました。もしかしてモノリスに触っていたりなんかして。進化をブーストさせるために、モノリスをおくというコマンドが、シム・アースというゲームにありましたが、それはまた別のお話。ブースの出口近くには、はぐれゴリラもいたりして、思わず団体行動が苦手な、自分自身を投影してしまいます。昔、白土三平のカムイ伝のキャッチ・コピーに、登場人物200人以上、あなたは誰に自分を重ねる、というのがありましたが、コンゴ園の50頭近くいるゴリラは、どれも個性があり思わず似た人を思いだしてしまいます。というわけで、私もすっかり、ゴリラ・フリークになりそうです。今度は、仕事抜きで行ってみましょうか。

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