1999年 1月号 Jazz Life誌 New York Report
New
York Jazz Witness
米ジャズ・タイム誌主催のジャズ・コンベンションの
ショウ・ケースに、加納美佐子が出演
アメリカにおけるジャズ・ミュージック専門誌はダウンビート誌やジャズタイム誌などの月刊誌が代表的である。そのジャズ・タイム誌では、毎年秋にニューヨークで、メジャー・レーベルからインディペンデント・レーベルまで様々なアーティスト達の参加するショウ・ケース・コンサートなどを行う、ジャズ・コンベンションを主催している。今回はニッティング・ファクトリーでひらかれたショウ・ケースに参加した、加納美佐子のライヴをリポートしよう。
1996年までニューヨークを拠点に活動していた加納美佐子(p)、帰国前にトーマス・チェイピン(as,fl)をフィーチャーした2つの作品を録音した。フリージャズ指向で、今回ニティング・ファクトリー・レコードよりリリーすられた「ウォッチ・アウト」と、96年にキング・レコード(Paddle
Wheel)よりリリースされた「ブレイク・スルー」である。ライヴはこの2枚のアルバムのショウ・ケースとして行われた。
可能は、かなりコンセプチュアルなコンポーザー/ピアニストである。彼女の指向する音楽性を、共演者が正確に把握しサポートすることによって、その真価を発揮する。このギグにも、ニューヨークのフリー/ジャズ/シーンでは欠かせない存在であるネッド・ローゼンバーグ(as,fl)、ヴェテラン・ベーシストのキャメロン・ブラウン(b)とともに、ニューヨーク・ジャズ・シーンの中の若手注目株で、イリアーヌ・イリアス(p)のグループで活躍するタケイシ・サトシらの好サポートを得た。
アグレッシヴなオリジナル・チューン「スリー・パープル・サークル」で、観客に強いインパクトをぶつけて始まったパフォーマンスは、一変して、スロー・バラッドの「ディア・トーマス」となった。加納が在米中に共演し、前2作でも重要な役割を果たしたトーマス・チェイピン(as,fl)は、今年2月に白血病のために他界した。なき友人に捧げたこの曲は、スローなソロ・ピアノに始まり、それがドラムスにシンクロし、ベースとサックスがはいり、激しく曲調が転換するという凝った構成だ。チェイピンのリリカルでありがなら、フリーキーで激しいプレイを彷彿させる演奏である。続いてはパドル・ホイール盤「ブレイク・スルー」。ネッド・ローゼンバーグのフルートをフィーチャーしたエモーショナルな曲であった。キャメロンブラウン(b)の重厚なボトムと、タケイシ・サトシの繊細なブラッシュ・ワークが加納のピアノの粒達を鮮明にする。
ラストはニッティング・ファクトリー・レーベル盤「ウォッチ・アウト」。シンプルでユーモラスなテーマが印象的なアップ・テンポの曲である。ここでもタケイシの疾走感たっぷりのシンバル・レガートと、ブラウンのベース・ラインが、バンドを牽引する。ストレート・アヘッドな4ビートから、8ビートにチェンジし、うねるリズムの上で、低音から高音を叩くパーカッシヴな加納のプレイに、不ラジオ・トーンを多用したローゼンバーグのアヴァンギャルドなサックスが、サウンド・カオスを創り出す。4ビートに戻り、テーマの呈示によって1時間のライヴは終わった。96年に日本に帰国後も、加納は、毎年夏のテキサコ・ジャズ・フェスティヴァルに参加するなど、ニューヨークでも地道な活動を続けている。今後の活動を期待したい。(11/2/1998
於 Knitting Factory)
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