2002年 11月号 Jazz Life誌 New York Report
New
York Jazz Witness
バンドの“原点”に復帰
ライヴ・レコーディングに挑んだソウライヴ
99年の秋ぐらいから、あらゆるジャンルの音楽を巻き込んで全米を席巻した、ジャムバンド・ムーヴメント。ソウライヴは、ファンク、R&B、ジャズ・フィールドに彗星のごとく現れ、スターダムを駆け上った。ブルーノートでのサード・アルバムは、原点に戻りオルガン・トリオをベースにした、NYのクラブでのライヴ盤となる。デビュー当時の、勢いを取り戻した白熱のライヴをリポートしよう。
2000年に、ソウライヴはメジャーのブルーノートと契約して以来、JB'Sのホーン・セクションを迎えた『Doin' Something』、サム・キニンジャー(as)を第四のメンバーとして迎え、打ち込み、ループを多用した『Next』と、ライヴとは一線を画した、アルバム製作に取り組んできた。筆者は、2000年春以来、そのターニング・ポイントのライヴ、レコーディングにすべて立ち会ってきた。今年春の、日本ツアーのあと、NYに戻ったソウライヴは、ソウル・ミュージックの殿堂、ハーレムのアポロ・シアターと、ダウンタウンの大型クラブ、アーヴィング・プラザで、アップタウン/ダウンタウンと銘打った2日間のライヴを行う。3管編成のソウライヴ・ホーンズと、エリカ・バドゥ(vo)・グループのシンガー、エンダンビ(vo)らを迎え、膨張するソウライヴ・ファミリーを、印象づけるコンサートであった。しかし、サウンド・ヴァリエーションの拡大は、ソウライヴの本来の魅力である、3人のグルーヴ・マジックを鈍らせるという、皮肉な結果を伴っていた。これからソウライヴは、どこへ行こうとしているのかを、危惧しつつも、安定化してきたジャムバンド・シーンの中で、確固たる地位を築いた彼らを、見守ってきたのだが、ニュー・アルバムは、NYのクラブ、マーキュリー・ラウンジでライヴ録音という情報を入手した。ライヴと、スタジオ録音がミックスされた、ソウライヴのインディ・デビュー・アルバム『Turn
it Out』は、このグループのみずみずしい瞬間を捉えた、最高のドキュメントであり、筆者は彼らのベスト・アルバムと評価しているが、もういちど原点に復帰をはかっていることを知る。
9/12,13,14と、3日間にわたってレコーディング・セッションは、行われた。デビューの3年前と同じ、50年代のハード・バッパーを思わせる黒のスーツ姿で、ステージに登場した。ファンキーは新曲、『Fire
Eater』で幕開けだ。昨年のレコーディングの頃から、シンセサイザーでベースラインをとり、ヒップホップ色を強く打ち出していた、ニール・エヴァンスだが、またオルガンによるベースライン・プレイに戻り、オルガンの上には、ホーナーのアナログ・シンセがセットされ、効果音的なバッキングに使われる。スネアのヘッドが破れんばかりに強打する、アラン・エヴァンスのビートとともに、オーガニックなニュアンスを強調する。エリック・クラズノーの、メロディアスなギターが、シンクロナイズした。3人の若きマスター達の、奇蹟のグルーヴ・マジックは衰えるどころか、大きくうねり、さらなる高次元に到達しつつある。夏のツアーの間に完成度を高めてきた新曲と、リニューアルした旧作が、繰り出される。ダンスするキッズ達と至近距離のステージは、お互いのヴォルテージを極限まで上げた。
リーダーのアランのオリジナル曲は、ソウライヴ最大のヒット『Steppin'』のように、シンプルでありながら口ずさめるぐらいのキャッチーさを持ち、ニールの曲は、思わずニヤリとしたくなるような、複雑な仕掛けがある。2人の長所をあわせもつのがエリックの個性で、3人のブレンドが、ソウライヴのセット・メニューを、豊富にしている。このレコーディングに連動してか、9月の下旬(日本盤は11/15)には、99年に3人が初めてジャムった時を録音した、幻のファースト・ミニ・アルバム"Get
Down"に、初期のライヴ音源を追加したリイッシューCDがリリースされる。来年3月にリリース予定の、今回のブルーノート盤と比較すると、4年間のソウライヴのグルーヴ・エヴォリューションが、明らかになる。
初日のレコーディングは、オリジナル・メンバーで、すすめられたが、最終的にアルバムには、ラッパーのJ-Live、春のコンサートにも参加していたシンガー、エンダンビが、ゲストとして収録される予定だ。9/22には、フィラデルフィアでローリング・ストーンズのオープニング・アクトをつとめる。今、ソウライヴ・ストーリーの第二章が、始まる。(9/12/02 於
The Mercury Lounge,NYC)
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