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2005年 4月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness


タイトなグルーヴ、シャープなメロディ
アンディ・ミルン率いるダップ・セオリー

 NYジャズ・シーンの、カッティング・エッジなパフォーマンスと、ジャズに関連したアート・ワークを展示する、非営利団体”ジャズ・ギャラリー”は、今年で設立10周年を迎えた。ハード・コアな音楽を提供するクラブの運営が厳しい中、ジャズ・ギャラリーの奮闘は、多彩なジャズ・シーンの中の一翼を担っている。このスペースをフランチャイズとする、アンディ・ミルン(p,kb,vo))率いるヒップなグループ、”ダップ・セオリー”のギグをリポートしよう。
 
 1995年に、ソーホーとトライベッカ地区の中間点、かつての有名ジャズ・クラブ、”ハーフ・ノート”があった場所のほぼ向かいの位置にオープンしたジャズ・ギャラリーは、当初はシーズンごとの展示がメインで、そのオープニング週の記念ライヴのみだった。カーメン・マクリエ(vo)の愛用ピアノと、ピアノ・サウンドで定評が高かったクラブ『ブラッドリーズ』のピアノをコレクションに持つことから、徐々にパフォーマンスに比重をうつし、現在は毎週月曜日のワークショップ,木曜から土曜までの定例ライヴ、不定期の火曜、水曜のライヴを、ニューヨーク州と市の芸術局のサポートを受けて、開催している。出演者は、旧スモールズを根拠にしていた若手から、スティーヴ・コールマン(as)一派の中堅、ベニー・パウエル(tb)ら大ベテラン、ストレート・アヘッドからアヴァンギャルドまで、多彩なリストを誇る。
 この日に出演したダップ・セオリーの中心メンバー、アンディ・ミルンと、ショーン・リックマン(ds,vo)や、ゲストでオリジナル・メンバーだったグレゴアー・マレ(hrmca)も、スティーヴ・コールマン&ファイヴ・エレメンツ在籍時から、よくジャズ・ギャラリーで演奏し、独立後もフランチャイズとしている。
 アンディ・ミルンはカナダのトロント出身、7歳の頃からクラッシック・ピアノを学び始め、ハイ・スクール時代から本格的にジャズに取り組んだ。大学卒業後、モントリオールのジャズ・シーンで活躍、コールマンにスカウトされて、91年ニューヨークにやってきた。90年代はM-BASEコレクティヴのメンバーとして、カサンドラ・ウィルソン(vo)、グレッグ・オズビー(as)、ラヴィ・コルトレーン(ts)らと共演、その才能に磨きをかける。98年に、ともにスティーヴ・コールマン&ファイヴ・エレメンツのリズムを支えたハイパー・ドラマー、ショーン・リックマンと、スイス出身の新進気鋭のハーモニカ・プレイヤー、グレゴアー・マレらと、自己の音楽アイディアを具現化すべく、ダップ・セオリーを結成、これまでに2枚のオリジナル・アルバムをリリースしている。現在のレギュラー・メンバーは、ミルン、リックマンに、サックスのローレン・スティルマン、UK出身のベース、ジャーネック・グウィッツデイル、パーカッシヴ・ポエットのジョン・ムーンからなるクァルテット編成だ。リックマンのタイトなドラミングをキーとして、ほぼすべての作曲を手がけてるミルンの独特のハーモニー感覚とメロディ・センスを前面にたてた、グルーヴとハーモニー、メロディが三位一体となったサウンド・ストラクチャーを持っている。
 
 ピアノのイントロ・メロディに、ベース・ラインが絡み、ドラムがシャープに切り込んで、グルーヴが大きくうねり始める。7拍子のリズムだがメロディに違和感はない。ヴォーカルというかパーカッシヴ・ポエトリーのジョン・ムーンが加わる。ラップというよりはリズミックな詩の朗読といった方が、たしかにしっくりとくる。ムーンのアクションをともなった、ドラムスとシンクロするシャウトで、グループのテンションは一気にあがり、ピアノ・ソロ、サックス・ソロへと続くファースト・チューンは、『ウェイティング・オン・ライン」だった。次々と新曲や、2003年にリリースしたCD「Y'All Just Don't Know」からのミルンのオリジナル曲が繰り出される。ワン・コードで、フリー・ファンク的なアプローチのアドリヴが続く曲から、リックマンの抒情的なヴォーカルをフィーチャーした、カナダの伝説的なシンガー・ソング・ライター、ブルース・コバーンとの共作の「エヴリウェア・ダンス」、ブッシュ政権を痛烈に批判したメッセージを含む「S・O・S」など、様々なテイストのメニューがサーブされる。最前列には、オマー・ハキム(ds)が座り、ジーン・レイク(ds)、ヴィクター・ベイリー(el-b)らの姿も見られた。ミルンが客席に声をかけると、オリジナル・メンバーのハーモニカのグレゴアー・マレがステージに上がった。スティーヴ・コールマン&ファイヴ・エレメンツ、ダップ・セオリーを経て、チャーリー・ハンター・クインテット、カサンドラ・ウィルソン・グループ、パット・メセニー・グループと、今や破竹の勢いのライジング・スターである。ピアノのバッキングに導かれたメロディは、ガレスビーの「コン・アロマ」だ。グルーヴに支配されてアグレッシヴだったステージが、デュエットの美しいメロディで包まれ内省的にカーム・ダウンした。ラスト・チューンは続けてマレをフィーチャーして、「ネオパラディグマ」。ハーモニカによってメロディ部にもブースターが装着されたがごとく、バンド全体がパワー・アップした。このマレ効果は、パット・メセニー・グループ・ツアーでも、必ず発揮されるだろう。ミルンも、現在多くの新曲を執筆中、次回作に向けて、着実に準備を進めている。今年の彼らの動向も、注目である。(1/26/2005 於Jazz Gallery)

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