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2005年 3月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

歌心いっぱいのドラミング
新世代のプレイヤー、クインシー・デイヴィス
 ジャズが流れる空間。東京では、バーやレストランでも、さりげなくかかるBGMのジャズ・ミュージックに出会うが、NYでは、ジャズ・クラブ、一部のレストラン&バー以外での場所はなかなか難しい。ホテルの、ラウンジ・バーなどは数少ないリラックスしてジャズを楽しめる空間だ。昨年から、本格的なプログラムをブッキングして注目されるホテル、The Kitano New Yorkでの、新進ドラマー、クインシー・デイヴィスのグループをフィーチャーしたい。

 現在はマンハッタン内で唯一の日系ホテルとなった、The Kitano New Yorkは、1995年から週数日、中二階のバー・ラウンジにBGM的にジャズ・グループが出演してきた。コンディションの良いスタインウェイのベビー・グランド・ピアノと、ノー・マイクで演奏が聴けるスペースを生かして、昨年からピアニスト中心のリスニングをメインとした本格的なプログラムを、毎週水曜から金曜もしくは土曜というローテーションでブッキングを始め、注目されている。主な出演ミュージシャンは、ハロルド・メイバーン、ドン・フリードマン、バリー・ハリス、ジュニア・マンスといった大ベテランから、サイラス・チェストナット、エリック・リード、ジョー・ファーンズワース(ds)、エリック・アレキサンダー(ts)、レイチェル・Z、ジェイソン・リンドナーら中堅、若手が登場し、三上クニ、なら春子から百々徹、早間美紀、山中千尋、白崎彩子らNYのシーンで活躍する日本人ピアニストも演奏した。一部ビッグ・ネームをのぞき、ミュージック・チャージなしのミニマム・ドリンクのみで提供し、好評を博している。かつてヴィレッジで、生音でクォリティの高いピアノ・トリオ&デュオを聴かせるクラブながら惜しまれつつ閉店したブラッドリーズのスタイルを、是非受け継いでもらいたい。

 クインシー・デイヴィス(ds)は、The Kitano New Yorkのハウス・ドラマーとして、多くのピアニスト達と共演してきたが、この日は初めて自らのグループを率いての出演である。1977年ミシガン州生まれ、音楽一家に育ち幼少時からドラムス、トランペット、チューバ、ピアノなど楽器に親しんで成長する。高校時代から正式に音楽を学び始め、ウェスタン・ミシガン大に進学し、ビリー・ハート(ds)の薫陶を受けた。卒業後、2000年夏にNYへ進出し、クレオパトラス・ニードル、アップ・オーヴァー・カフェなどのジャム・セッションに参加し、注目を集める。現在、トム・ハレル(tp)、ベニー・グリーン(p)のグループのレギュラーを務めている、売り出し中の若手ドラマーだ。初リーダー・グループのメンバーは、ボスであるヴェテラン・トランペッター、トム・ハレル、実兄のゼビア・デイヴィス(p)、ケニー・バロン(p)や、ジミー・ヒース(ts)・グループのボトムを支えているファースト・コール・ベーシストの北川潔のクァルテット編成である。

 アフロ・リズムで、ステージは幕開けた。オープニング・チューンはクインシーが数日前に書き下ろしたオリジナル「モーニング・ブレイン・ストーム」だ。ブリッジで転調し、4ビートになるオーソドックスな構成を持つ曲だ。続くミディアム・スウィングが心地よい「レイ・バック」と、北川をのぞく3人は、トム・ハレル・クインテットのレギュラー・メンバーで、この3年半の間、多くのツアー・サーキットをともにしており、鉄壁のコンビネーションを誇る。
 3曲目の「コールド・レイン」、スタンダード・バラードの「エヴリシング・ハップン・トゥ・ミー」でナーバスにトランペットと、フリューゲル・ホーンを交互に試していたハレルも、やっとエンジンが掛かり始め、ピュアな音色で、美しいメロディを紡ぎ出す。そのバトンを受け取り、ピアノのゼビア・デイヴィスも、シングル・トーンと最小限のコンピングで、端正でミニマルなソロをとった。クインシーよりも6歳上のゼビアは、90年代半ばにNYにやって来て、新人育成では定評があったベティ・カーター(vo)の最晩年のグループに参加して頭角をあらわした。ソリストがもっとも引き立つコンピングと、トータル・ミュージックを意識したインプロヴィゼーションは、さすがカーター門下生である。軽快なラテン・チューン、「キュバナ」では、それまで繊細なシンバル・レガートと、フロント陣をサポートするドラム・ワークを聴かせていたクインシーが、アグレッシヴに、ワイルドに、メロディアスに、疾走した。スタンダード一曲以外は、すべてオリジナル・チューンで固めたセット・メニューは、彼の高い作曲能力と、メロディを重視するグループのステイトメントを、明確に表現している。エンディングのドラムスのバース交換は、歌の応酬のようだ。ラストのブルースは「PC」。コルトレーンの「Mr. PC」とは異なるが、ポール・チェンバース(b)に捧げたオリジナルのメジャー・ブルースだ。北川が大きくフィーチャーされる。昨年リリースされた、ケニー・バロン(p)、ブライアン・ブレイド(ds)をフィーチャーしたリーダー作「ancestry」も好評な北川の、どっしりと根をはった骨太なベース・ラインと、メロディ・ラインは、堂々たるジャズのメジャー・リーガーの風格がある。リラックスしたムードの中で、ファーストセットは終わった。大きな将来性を持つ逸材クインシー・デイヴィスの、今後の大飛躍が期待される。(1/21/2005 於 The Kitano New York, NYC)

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