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2001年 4月号 Jazz Life誌 New York Report

IAJE 第28回年次総会リポート

Jazzを愛するすべての人が参加できる国際ジャズ教育者協会の総会がニューヨークで開催された

 去る1月10日から13日まで、NYのヒルトン・ホテルと、シェラトン・ホテルを会場として、IAJE(国際ジャズ教育者協会)の、28回目の年次総会が行われた。ミュージシャン、教育者、レコード会社、音楽メディア、学校、フェスティヴァル運営者、楽器メーカー、教則本、譜面出版社、レコード店、学生、リスナーと、様々な分野からジャズを支える人々が、世界中から8,000人以上も集まり、200に及ぶ学校、企業等の出店展示、即売、200以上のライブ・パフォーマンス、クリニック、パネル・ディスカッションなどが同時に進行する、アメリカでも有数の規模を誇るイベントだ。NYのニュースクールの講師として、このイベントに参加したギタリストの井上智と、4日間を撮影した常盤武彦に、リポートして貰おう。
(以下、常盤:T、井上:I)


T: 井上さん、どうもお疲れさまでした。盛りだくさんの、凄いイベントでしたね。まずは、ライヴ・パフォーマンスから振り返ってみましょう。オープニング・ナイトは、ウォレス・ルーニー(tp)の、マイルス・トリビュートともいえるグループ、そして高校ビッグバンドの、デューク・エリントン・コンペの優勝校である、コネチカットのホール・ハイスクールの演奏に、"パーディド"で参加したウィントン・マーサリス(tp)、NYでは、非常に高い評価を受けているマリア・シュナイダー・オーケストラが、メイン・ホールに登場しました。

I: どれも、完成度が高く聴きごたえのある演奏でしたね。高校生ビッグ・バンドのレベルの高いのに驚いた。アメリカのミュージシャンの層の厚さを感じさせる演奏でしたが、あこがれのウィントンと共演しながらも、のびのびとしたプレイを聴かせてくれました。またマリア・シュナイダーは、映像を感じさせるカラフルなサウンドと、女性ならではの繊細さを兼ね備え、21世紀のビッグ・バンドの一つの方向性を、提示したといえましょう。ブースで彼女の譜面の出版記念サイン即売会もありました。

T: 大物が登場するメイン・コンサートでは、会場もビーコン・シアターに移動して、パット・メセニー・トリオがありました。メセニーは、アメリカのジャズのカテゴリーの中で、コンテンポラリー・ジャズとして評価されていて、トラディショナルなギタリストとはとらえられていなかったのですが、前2作のトリオ・シリーズで、ジャズ・ギタリストとしても確固たる評価を高めました。井上さんは、ギタリストの立場から、どのようにとらえましたか。

I: 変幻自在の、インタープレイにいつも通り圧倒されました。"ブライト・サイズ・ライフ"が聞けて良かった。この際"ジャイアント・ステップス"も、演奏してほしかった。

T: メセニーは、昼のメインステージで基調講演も行っていました。黒のスーツでキメて、若い世代へのメッセージを送っていましたが、さすがにこちらは、インプロヴィゼーションとはいかず、書いた原稿を、ずっと読んでいましたよ。

I: 3日目のメインステージでは、ブレッカー・ブラザースに、ストリングス・オーケストラという面白い編成がありましたね。

T: ブレッカー・ブラザースが共演するのは、おそらく92、3年の再結成ツアーの以来でしょうね。バックは、オランダのメトロポール・オーケストラ、ストリングスもはいったビッグ・バンドです。アレンジ、指揮を担当したのは、ヴィンス・メンドーサ。彼は昨年のジョニ・ミッチェル(vo、g)のアルバム、"ある愛の考察(ポートレイト)〜青春の光と影"(ワーナー)でも編曲を担当し、高い評価を得ています。ミュージシャンの間では、ストリングスをグルーヴさせる事の出来る数少ない一人といわれているアレンジャーです。ブレッカー・ブラザースのナイト・フライなどをやっていました。ホットな部分と、ストリングスがいてリリシズムも感じられる、異色の組み合わせでしたね。また最終日には、ジャッキー・マクリーン(as)や、カサンドラ・ウィルソン(vo)など、新旧織りまぜて様々なタイプのアーティストが登場しました。

I: このコンファレンスのライヴの面白いところは、いつものクラブ・ギグでは、なかなか見られない企画ライヴがあります。デイヴ・リーブマンのビッグバンドとかも興味深かったですし。

T: ボブ・ミンツァー(ts)のビッグ・バンドも、ライヴを聴くことが出来ました。カウント・ベイシー・オーケストラのレパートリーを、ミンツァーならではのモダンなアレンジで、再現していました。ヨーロッパのビッグ・バンドや、全米のアマチュア・グループのレベルも高かったです。日本からも、昨年は参加したビッグ・バンドがあったそうですね。今年も、いくつかのバンドで活躍する日本人プレイヤーを見ましたが、井上さんも、前に演奏なさったことがあるのですか?

I: ニュースクールの学生時代にサンアントニオで、また3年前のNY大会の時に、ニュースクールの講師グループで、演奏しました。学生の時には、デイヴ・リーブマン(ts)、ジョン・ファディス(tp)と共演しました。この様な学校のデモンストレーション・ライヴでは、ファディスとパーチェス大学の講師グループによる、"クールの誕生"再現グループも素晴らしかったです。

T: 学校の出店が多いのにも、驚かされました。全米に、こんなにジャズを学べる学校組織があるとは、今まで気が付きませんでした。

I: これから、アメリカでジャズを学びたいと考えている日本人の方にも最適なイベントでしょうね。各学校は、生徒募集の目的で展示を行っているので、資料もすぐそろいますし、直接、講師陣の話を聞いたり、さらに演奏を聴くことが出来ます。

T: このイベントが、ジャズ・フェスティバルと一線を画しているのは、多彩なパネル・ディスカッション、クリニックにあると思いました。私が興味を持ったのは、"Inside Jazz"というタイトルで、50、60年代のブルーノート・レーベルの共同経営者であり、フォトグラファーである、フランシス・ウルフに焦点を当てた、ディスカションでした。生前の彼に近い人物として、社長だったアルフレッド・ライオンの未亡人のルース・ライオンと、滅多に公共の場に姿を現さない伝説のエンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダーが参加しています。彼らの証言により、クオリティの高い作品を作り続けていたブルーノート・レーベルの奇跡の一部を、かいま見たような気がしました。

I: クインシー・ジョーンズ(arr)、ジョージ・デューク(kb)、ナット・ヘントフ(ライター)の対談も、面白かったですよ。クインシーは、今やジャズの黄金時代を生きてきた、数少ない一人ですからね。現在までの彼のキャリアを振り返った興味深い話が聞けました。

T: マイケル・ブレッカー(ts)と、ジョシュア・レッドマン(ts)らを中心にした、今年のグラミー賞ジャズ部門候補者対談も、ありましたね。それぞれが対象作品の一部を聴かせて、コメントするという形式でしたが、ブレッカーがジョシュアら若い世代からも、影響を受けることがあるという発言をしていました。

I: しかし、スター性だけに目を奪われていると、IAJEの真意を見過ごすでしょう。ジャズ教育のプロ達によるクリニックも充実していました。"ボーカルや各楽器のマスタークラス"、"作曲、編曲、即興、アンサンブルに関するレクチャー"、"ジャズ史などの音楽に関するリサーチ"などを中心に、ビジネスやテクノロジーに関するものと、多岐にわたっていました。多くの事が朝から夜中まで同時進行するので、いやはや体が幾つあっても足りないですね。そういう意味で参加者は会場になっているホテルに泊まると便利ですね。

T: 日本からでも、会員登録さえすれば参加できるそうです。会長の、ロン・マッカーディ氏も、日本からの参加を、強く要望していました。スタイル、世代、分野、国境を越えてジャズ・コミュニティが一体となって、その発展繁栄を考えるこのイベントに、より多くの方に触れていただきたいと思います。

IAJEとは

 International Association of Jazz Educatorsの略。国際的な、ジャズ・ミュージックと、ジャズの教育システムの発展と、進歩に寄与することを目的とする会員制組織である。1968年にアメリカで、National Association of Jazz Educators(NAJE)として発足、89年に現在の国際組織に発展した。。カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア、ラテンアメリカ、南アフリカに、支部がある。今年で28回を迎えた年次総会、機関誌"Jazz Educators Journal"の発行、奨学金の授与、教育者の養成、コンペティションの主宰などを、主な活動内容とする。来年の、年次総会は、1月9日から12日にかけて、カリフォルニア州ロングビーチにて開催される。会費を支払い、メンバー登録をすれば、一般からの参加も歓迎される。コンベンション当日の登録も可能。詳しくは、下記ホームページ参照
 

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