Make your own free website on Tripod.com

2003年 8月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

昼下がりのニューヨークを直撃した
爆音ピアノ
・トリオ、ザ・バッド・プラス

 NYジャズ・シーンに夏の本格的な到来を告げる、JVCジャズ・フェスティヴァル。今年もニュー・フェイスから、中堅、ベテランまで強力なプログラムが組まれていた。米コロンビア・レコードが、自信を持ってシーンに放ったザ・バッド・プラスの、力強いプレイは、ブライアント・パークでの野外ショウ・ケースで、昼休みのニューヨーカーたちを、釘付けにした。この爆音ピアノ・トリオのショウ・ケースと、JVCジャズ・フェスティヴァルのハイライトを、お伝えしよう。
 
 6/15から6/28までの2週間にリンカーン・センター、カーネギー・ホール、アポロ・シアターらの大ホールから、野外ステージ、マンハッタン内のジャズ・クラブ、ハーレムのコミュニティ・スタジオに、オーネット・コールマン(as)、チック・コリア(p)、ポール・モチアン(ds)ら大ベテランから、テラーク・レーベルの期待の新鋭ヒロミ(上原ひろみ)まで、様々な世代のプレイヤーたちが競い合った。NYでのフェスティヴァルは追加公演の9/19カーネギー・ホールでの、キース・ジャレット(p)スタンダーズ・トリオで終了する。  筆者が散見したライヴでは、ついにその全貌が明らかになった、ロイ・ハーグローヴ(tp,flh,vo)のヒップ・ホップ・プロジェクト、"RH・ファクター"は、密かに期待したエリカ・バドゥ(vo)や、ディアンジェロ(vo,kb)の登場はなかったものの、レジー・ワシントン(b),el-b)、バーナード・ライト(kb)、ジャック・シュワルツバルト(ts,ss)らを中心としたタイトなグループに、3人のゲスト・ヴォーカルがフィーチャーされ、ブラック・ミュージックの殿堂アポロ・シアターで、ジャズの臨界点を、現代のストリート・ミュージックに拡大した奇跡のパフォーマンスを見せてくれた。
 ウェイン・ショーター(ts,ss)は、フル・オーケストラ、タップダンサーを伴って、カーネギー・ホールに登場した。この2年行動をともにしているレギュラー・クァルテットの演奏は集団インプロヴィゼーションが、ここまで音楽を解放して自由を手に入れられることを示した。スペシャル・ゲストのハービー・ハンコック(p,kb)とのデュオは、人間の想像力、思考の流れを、サウンドに置き換えテレパシーで会話を楽しんでいるかのようだ。オーケストラとの共演は、最新作"アレグリア"の壮大な世界観を再現し、やタップ・ダンサーのサヴィオン・グローヴァーは新たな局面をショーター・ミュージックに書き加えた。
 
 5月にメジャー・デビュー・アルバム”ヴィスタス”をリリースし、この夏は、北米、ヨーロッパ、日本のジャズ・フェスティヴァルを席巻するザ・バッド・プラスは、NYでは昨年から、ヴィレッジ・ヴァンガード、ジョーズ・パブ、ニッティング・ファクトリーなどに出演しており、強烈なグループ・アンサンブルで、注目を集め"史上最轟音のピアノ・トリオ"と呼ばれている。イーサン・アイヴァーソン(p)、リード・アンダーソン(b)、デヴィッド・キング(ds)の三人は1970年前後に中西部のミネソタ州と、ウィスコンシン州の出身だ。中学生の頃からのバンド仲間だった、アイヴァーソンと、キングが、90年頃にアンダーソンと出会い、グループの母胎ができる。2000年から正式にザ・バッド・プラスとして活動をスタートし、スペインのインディ・レーベル、フレッシュ・サウンドからファースト・アルバムをリリース、2002年ヴィレッジ・ヴァンガードに出演中に、コロンビア・レコードと契約を結ぶことになる。アコースティック・ピアノ・トリオでありながら、最轟音から繊細なプレイまで、幅広いダイナミックレンジを誇り、ウィットに富んだ3人3様の作曲も、完成度は高い。
 この日の、午後のNYは気温は35℃を越えるうだるような暑さの中、2番目のバンドとして、ステージに登場した。新曲や、アルバムからの曲を演奏後、ポリスの「見つめていたい」をカヴァーする。ポップス・チューンを解体、メタ・ポップな手法で再構築するのも、彼らのお家芸だ。このパーフェクトに美しい曲を細分化し、見事に別の局面を引き出していた。ドラマティックな構成のキングのオリジナル曲「1972 ブロンズ・メダリスト」や、インパクトが強い、リズミックな轟音系の新曲が続く。前日に同じステージに登場したヒロミも、リズミックでボルテージの高いパフォーマンスを聴かせ、喝采を浴びていたが、ヘヴィー・メタル・ジャズともいうべきハード・ボイルド・サウンドも、今のトレンドになってきた。オーネット・コールマン(as)の「ストリート・ウーマン」も取り上げ、最後の曲は、ブロンディイの「ハート・オブ・グラス」。見事にザ・バッド・プラス・カラーに染められていた。30代前半の、ヒップホップの洗礼を受けた世代のとらえる、21世紀型のジャズは、リズムが柔軟で、様々な音楽をどん欲に取り入れており、この、4、5年ほど盛り上がっていたジャムバンドの流れの中でのジャズ系のグループが、別のベクトルに向けてさらに進化したような印象を受けた。8月には、斑尾に上陸するこのトリオに、乞うご期待。(6/27/03 於Bryant Park,NYC)

関連リンク