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2000年 11月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

ラウンジ・リザースからセックス・モブ
ジャム・バンド・シーンの重要人物スティーヴ・バーンスタイン

 前号で、ジャム・バンド・ムーヴメントの現在を取りあげたが、このムーヴメントに含まれるミュージシャンの中には、10年以上もの間、独自の音楽スタイルを追求し続け、現在のムーヴメントと合致して、ジャム・バンドのカリスマとなったプレイヤーもいる。今回は、そんなミュージシャンの一人である、スティーヴ・バーンスタイン(tp)の、ウェットランズ・プリザーヴでの、セッションをリポートしたい。
 

 ウェットランズ・プリザーヴは、10年以上の歴史を持つロック&ブルース・クラブだが、トライベッカ地区に移転してから、グルーヴィーで、先鋭的なミュージシャンを、ブッキングするようになってきた。NYのジャム・バンドの拠点であり、ここで演奏すれば、ジャム・バンドとして認知されるといっても過言ではない。 ウェットランズ・プリザーヴの目玉は、レジデント・システムにある。1ヶ月間に渡って、週一日を特定のグループを集中的にブッキングし、週替わりでゲストを入れて、そのセッションを聴かせている。昨年のDJロジックのレジデント月間には、ジョン・スコフィールド(g)や、ジョシュア・レッドマン(ts)がゲストとして参加し、白熱のセッションを繰り広げた。
 ジャズ系の、ジャム・バンドを語るときに見逃せないグループとして、ジョン・ルーリー(as)率いる、"ラウンジ・リザース"がある。20年の歴史を持つこのグループは、サウンドのおもちゃ箱をひっくり返したように、ファンク、ジャズ、クラッシク、ロックと、多面性を持っていた。このグループの音楽的実験に参加していたメンバーの中に、ジョン・メデスキー(org、p)、マーク・リボー(g)がおり、スティーヴ・バーンスタイン(tp)も中心メンバーであった。当時の"ラウンジ・リザース"は、現在のジャム・バンド・シーンの温床的役割を果たしている。 バーンスタインは、その後デイヴ・トロンゾ(g)をフィーチャーしたグループ、"スパニッシュ・フライ"の活動を経て、98年にエリントン・ナンバーから、ジェイムス・ブラウン、、グレイトフル・デッド、プリンス、のカバーと、広い音楽性を誇るグループ、"セックス・モブ"を結成し、ニッティング・ファクトリー、トニックを中心に活動して、ジャム・バンドのリスナー層である若い世代の絶大な支持を得た。
 

 この日のセッションは、パーマネント・グループとは違うメンバーを集め、異色の顔合わせを楽しめた。フロントに、デヴィッド・フュージンスキー(g)と、カサンドラ・ウィルソン(vo)のツアー・グループなどで活躍するアダム・ロジャース(g)のツイン・ギターを擁し、リズムにジャム・バンド・シーンのメイン・ミュージシャンの一人ベン・ペロウスキー(ds)と、"スパニッシュ・フライ"の盟友マーカス・ロジャス(tuba)というメンバーで、構成されたバンドであった。
 バーンスタインの音楽は、ミュージカル・ディレクターを務めた、ロバート・アルトマン監督の"カンサス・シティ"や、ダンス・シアター・ハーレムに書いたモダン・バレエ曲など、緻密な計算に基づいて作曲されたものと、"スパニッシュ・フライ"や、"セックス・モブ"のように、シンプルなモチーフだけを決め、ステージでスポンテニァスに発展させてゆく、集団即興演奏をメインとしたプロジェクトと、2つの側面を持っている。このセッションは、明らかに後者のコンセプトで、企画されたものである。エレクトリック・ベースと何ら遜色のない、ロジャスのチューバのベースラインと、ペロウスキーのタイトなリズムの上で、フュージンスキーとロジャースが、それぞれの個性的なアプローチで、サウンドを色づけし、バーンスタインが、奔放なソロをとる。 彼は、レギュラーのトランペットと、音域の高いトロンボーンともいうべきスライド・トランペットを使い分ける。スライド・トランペットは、ファンク・リズムの上で、シャウトするジェイムス・ブラウン(vo)のようだ。卓越したテクニックに裏付けられたインプロヴィゼーションとともに、バーンスタインの演奏をワン・アンド・オンリーにしているのは、バランス感覚に富んだ、ディレクションであろう。シンプルなワン・コードの上で、それぞれプレイヤーに奔放なアドリブをとらせ、絶妙なタイミングで次のプレイヤーにつなぐ。バーンスタインの指示によって、リズム陣がドラスティックにビートをチェンジし、パフォーマンスにダイナミックスを持たせてゆく。80年代のマイルス・ディヴィス(tp)・グループのような、スリリングなテンションを、セッション・グループで聴かせているのは、バーンスタインの優れたディレクション能力の証明である。
 "セックス・モブ"のほかにも、"ミレニアム・テリトリー・オーケストラ"と、サイド・プロジェクトを手がけるバーンスタインだが、このセッションも、パーマネント・グループへの発展を期待したい。
(9/13/00 於 The Wetlands Preserve)

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