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1998年   2月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

ラリー・ゴールディングス・トリオ・ライヴ・アット・スモールズ

 NYにおいてもジャズクラブの経営はかなり難しいらしく、伝統ある老舗クラブでさえ内情はかなりシビアな状況にあるようである。オープニング・ウィークでビッグ・ネーム・アーティストを出演させ華々しくスタートしても、1〜2年のうちにクローズという店も見受けられた。
 高級ジャズ・クラブの主な顧客層は観光客なのだが、彼らに迎合して安易なブッキングをしていると、地元のファンや辛口のマスコミに見放され、いつしか観光客の足も遠のき閉店というのがよく見られるパターンだ。
 そんな中で一線を画して、1994年以来個性的なブッキングを行っている小さなクラブがある。"ニューヨーク・カッティング・エッジ・クラブ"と辛口のニューヨーク・タイムスに言わしめたジャズ・クラブ"スモールス”は、NYのローカル・ミュージシャンからメジャー契約アーティストまで、多彩なブッキングを日替わりで提供している。このクラブの売り物は、マンハッタンのジャズクラブでは金・土の夜のブルーノートぐらいでしか開催しなくなってしまったアフター・アワー・ジャム・セッションが毎晩2時から朝8時まで催されていることであろう。前号でも紹介したニュー・スクールの学生も多いが、ロイ・ハーグローヴ(tp)、デルフィーヨ・マーサリス(tb)、スティーヴ・トゥーレ(tb)などが飛び入りして、激しいホーン・バトルを聴かせてくれることもある。"スモールズ"はクラブと名乗っていても、リカー・ライセンス(酒類販売許可証)取得していないので、飲み物はセルフ・サーヴィスのソフト・ドリンクとスナックだけだが、ビール、ワインなどの持ち込みはOKとなっている。若手オルガン・プレイヤーのサム・ヤエルが、1年前からハモンド・オルガンを"スモールズ”に置いてから、毎週1,2階はオルガン・バンドが出演しているが、今回はラリー・ゴールディングス(org)、ピーター・バーンスタイン(g)、ビル・スチュアート(ds)のオルガン・トリオのライヴ・リポートをしてみたい。
 
 この5年くらいの間に頭角を現してきたこの若手トリオは、ステディ・バンドとして多く脳A-をこなしてきたが、地元NYでたいとなサウンドの中にもリラックスしたムードのプレイを聴かせてくれた。彼らは、ジミーすみすら従来のオルガン・トリオとは明らかに異なるサウンド・テクスチャーを持っている。オーソドックスなジャズ・ギター・プレイをするバーンスタイン、複雑なリズ布組み合わせでグルーヴを構築するスチュアート、ピアニスト的な(本来ピアニストなのだが)緻密なフレーズでソロを構成するゴールディングスの3人のコンビネーションが、この印象を与える。シンプルなリフの繰り返しでソロを盛り上げるなど、従来のオルガン・グループが持っているエンタテインメント性も持ち合わせているのだが、ゴールディングスのピアニスト的なハーモニーの組み立てや、フレーズの選択などのアプローチが、サウンドにオリジナリティを加えているといえよう。バーンスタインとのインタープレイをフィーチャーしたバラッドでは、端正なフレイジングのギター・ソロに寄り添うようなピアノと、ベースのようなバッキングを聴かせてくれるのだが、オルガンのサウンドがギターと絶妙にブレンドされ、ピアノよりも美しいアンサンブルが創り出されていた。ゴールディングスは、ピアノでは出せないロング・トーンを多用した管楽器的なアプローチも盛り込んでおり、煽るスチュアートのアグレッシヴなドラミングによって、サックス・プレイヤーがグループにいるような錯覚がもたらされる。演奏メニューもオリジナル曲を中心に、オールド・スタンダートの「ノーバディエルス・バット・ミー」、デューク・エリントン(p)の「オール・トゥ・スーン」という渋めの選曲にも、彼らのトラディショナルを重視するという姿勢が伺われた。このような現在進行しているサウンドに触れられるのも、"スモールズ”のおもしろさである。

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