Make your own free website on Tripod.com

1998年   8月号 Jazz Life誌 New York Report

New York Jazz Witness

夏のジャズ・フェスティヴァルでみた、グレイト・アメリカン・ブラック・ミュージックの現在

 テキサコ・ニューヨーク・ジャズ・フェスティヴァルと、JVCジャズ・フェスティヴァルで、ジャズ・フェス一色に染まったNYの6月。ブルースから始まったアフロ・アメリカンミュージックの“今”が、明らかにされたような3つのライヴをリポートしよう。

 昨年は同時期に開催したニッティング・ファクトリー主催のテキサコ・ニューヨーク・ジャズ・フェスティヴァルと、ジョージ・ウェインのプロデュースによるJVCジャズ・フェスティふぁるが、今年は6月1日〜14日がテキサコ、15日〜27日がJVCとスケジュール変更がなされ、ほぼ1ヶ月を通して、様々なイヴェント、コンサートが繰り広げられた。その中でもジャズのみならず、ブラック・ミュージックの視点から見ても、テキサコ、JVCならではのディープなイヴェントがいくつか見受けられた。

 JVCジャズ・フェスティヴァルでは、ソウル・ミュージックのデュオ、アシュフォード&シンプソンに、文学のみならずジャズ、ヒップホップなどの現在のブラック・カルチャーに多大な影響を与えている詩人マヤ・アンジェロウが朗読でジョイントするコンサートが催され、Hopsack + Silk Recordsからりリースされたアルバム"Been Found"をライヴで聴ける貴重な体験となった。テキサコ・ニューヨーク・ジャズ・フェスティヴァルでも、ブッチ・モリス(tp,arr)の"ホーリー・ゴースト"、ヘンリー・スレッギル(as,fl)の"ソサエティ・シチュエーション・ダンス・バンド"とニッティング・ファクトリーならではのダブル・ビル(二本立て)コンサートがあった。

 ブッチ・モリスは、この10年以上デヴィッド・マレイ(ts,bcl)とともに活動し、彼のビッグバンド等のアレンジを手掛けてきた。マレイの爆走型ソロと好対照をなすアンサンブルは評価も高かったので、"ホーリー・ゴースト"でも緻密なアレンジと、アヴァンギャルドなソロの絶妙なブレンドが聴けるという期待があったが、それはよい意味で見事に裏切られた。ジェィムス・ブラッド・ウルマーとブランドン・ロスの2ギター、グラハム・ヘインズ(cor)、J.T.ウィリアムス(ds)のほか、4人のコーラス、3人のストリングス、2人のターン・テーブル・プレイヤー、ホーン、パーカッションと総勢20人からなる"ホーリー・ゴースト“は、スコアが一切なく、すべてもリスのコンダクトによって進行するという、サウンド・カオスを現出させた。それぞれの曲は、一定のビートで始まり、モリスの指示で、その場でソロ・オーダーが決まり、かなりオープンなソロをとる。曲の進行につれて、モリスの出すキューによってリズムが有機的に異なる展開を聴かせていく。1970年代のマイルス・グループのサウンドを寄り混沌とさせたこのグループのサウンドは、たまらなくスリリングで、無秩序の中に見出される不思議な調和ーブルース・フィーリングが生み出す調和を、濃厚に感じることが出来る。

 続いて登場したヘンリー・スレッギル・ソサエティ・シチュエーション・ダンス・バンドは、彼のレギュラー・グループ"Make A Move"のメンバー、ブランドン・ロス(g)、トニー・セドラス(accordion)、ツトム・タケイシ(el-b)、J.T.ウィリアムス(ds)を中核にすえ、ボブ・スチュアート(tuba)、ストリングス、ホーン、パーカッション、そして2曲フィーチャーされたアミナ・クロウディン(vo)と、これも20人からなるビッグ・バンドだ。"Make A Move"は、タイトなリズムの上、サックス、アコーディオン、ギターが、アブストラクトで浮遊感のあるサウンドを構築するというストラクチャーなので、その拡大ヴァージョンのグループかと予想していたのだが、ダンス・バンドの名が示すとおりの、ゴスペル・フィーリングを持ったファンク・プロジェクトであった。

 スレッギルはコンダクトに徹し、タケイシ、ウィリアムス、スチュアート、ロベルト・マルドナ(perc)が生み出すタイトでアーシーなグルーヴの上で、アース・ウィンド&ファイアーのようなブラス・アレンジのホーン・セクションとファンキーなソロがからむという、エンタテインメント・バンドである。フリーキー、アヴァンギャルドで土俗的名プレイの印象が強いスレッギルだが、"Make A Move"とこのダンス・バンドを共存させていることは、レスター・ボウイ(tp)が、アート・アンサンブル・オブ・シカゴとブラス・ファンタジーとを使い分けている方向性との類似がみられ、興味深く、今後の活動に注目したい。

 これら3ユニットのライヴ・パフォーマンスは。ブルースに音を持つグレイト・アメリカン・ブラック・ミュージックの現在を、違ったアングルから体感し、ブラック・カルチャーの現在を切りとったエッジをみることが出来た。(アシュフォード&シンプソン・ウィズ・マヤ・アンジェロウ=6/20/1998 JVC Jazz Festival, Avery Fisher Hall, ブッチ・モリス・ホーリーゴースト、ヘンリー・スレッギル・ソサエティ・シチュエーション・ダンス・バンド=6/12/1998 Texaco New York Jazz Festival,Hudson Tent)

関連リンク